いま医療的ケアの必要な方に当面必要なもの:移動支援とコミュニケーション支援についての考え方と課題 

いま当面の自立支援事業のはざまで認知し、拡大しなければならない支援が二つあります。

一つは、学校の通学保障とも関連した「移動支援」であり、もう一つは、病院に入院した時の見守りを可能とする「コミュニケーション支援」です。

どちらも地域支援事業のひとつですから、各市町村単位で認可できるものです。ただし、正面切っては、どこでも申請すれば可能というものではありません。すでに利用しているところは増えてきています。しかし、このまま普遍化、平準化するとは思えません。

どちらもにたような「狭間」にあります。移動支援は教育委員会と市福祉課、コミュニケーション支援は医療保険と市福祉課、ということだと思います。

まず移動支援から、1979年以来すべての子どもに教育保障をする名の下に現在の文科省は動いてきました。医療的ケアの子どもたちだけでなく、常時薬を飲んだり、てんかん発作のある子どもたちは、なんとか親の付き添いで通学から学習時間までを保障することで始まって行きました。(通学が教育委員会の責任下なのかどうかを討論する気はありません)養護学校における医療的ケアの歴史はまさにこの運動でした。これまで医療的ケアの必要な人に対して誰が実施者になるか、が一つのバリアーになり、文句なしに通学保障できない、ということでした。ところが昨年から三号研修(法制化時には特定関係下の研修とよばれていた)を受け、個別な研修もクリアすれば移動支援の状態であっても法的に可能になりました。となると移動支援を受ける事業者があるかないか、だけが問題となり、市当局が「不可能」という理屈がありません。同じ市の教育委員会と福祉課のやり取りで解決すべきです。ただ、移動支援を受ける事業者がおそらく地域支援事業(日中支援など)を受けているところになると思われます。

はたして三号研修など一連の研修が各市で実施できているかの方が問題になると思われます。学校は教育委員会で三号研修しているところが増えてきていますが。

僕の意見としては、交渉次第で事業者さえあれば気管内吸引など移動支援で非医療職でも可能と思います。が、そのリスクを背負う事業者の問題と児童生徒の病態の難しさ(重さ)にも関連しますから、やはり主治医が関与すべきと思います。もし、市町村の地域支援事業ではできない、というのであれば、厚労省担当局に市当局から問い合わせてもらうといいと思います。法的に「違法」なのか?と。

もう一つ、コミュニケーション支援の問題です。重症児者が病院に入院した時、いつものヘルパーが見守りにつくこと、そしてそれを一部の市町村では「コミュニケーション支援」として事業として認めている。ただし不十分な条件ではあります。まず入院先の病院の了解が一番難しい。つぎに一人についての時間数がそれぞれ決められています。必要な分だけ、という障がい者の側の考え方ではありません。病院の了解の難しさの理由は二つあります。一つは障がい者の保険診療での支払い(子どもの1/3)が低い。障がい者を診察したことない医師が夜間等の当直にはいる。今地域の中小病院は生き残り策で必死です。リスクを抱え込まないことが必須なのです。この理由と、もう一つは大きな日本の医療の課題です。看護師を7:1で入院費を医療保険で取りながら、自立支援の福祉費用でコミュニケーション支援をとることの二重取りになることです。いまこのコミュニケーション支援が拡大し、平準化しないのは法的な問題があるのです。限定的なものであれば「おめこぼし」なのでしょう。ところが、日本の重症児医療と福祉の歴史は「重症心身障害児入所施設」でこれを法的に可能にしていました。親たちの運動です。すなわち、いま、重症児入所では医療費と福祉費のダブルスタンダードが可能なのです。これは世界に誇る制度です。しかし、「限定的な施設」(重症児入所施設)のみ可能になった歴史なのです。これは余談ですが、昨年からの吸引の法制化によって「その入所施設では医療職以外は吸引などに関わってはいけない」という但し書きがつきました。施設では逆行です。これまで、重症児が成人になり、いまや高齢化をむかえることができたのは、このダブルスタンダードのおかげなのです。我が国の誇りなのです。それを「市場化原理」かどうかわかりませんが、いまさら否定する方向の動きはおかしいですね。むしろ病院に緊急入院した医療的ケアの必要な重症児者には、入所者と同様にとはいわなくても、「見守りヘルパー」がついてもおかしくないではないですか。そうすれば、もっと地域で重症児者を支援していくことができるはずです。

以上、二つの地域支援事業についての意見を書きました。学校での医療的ケアの歴史、重症心身障害児の歴史の積み重ねで、そして地域で重い障がいをもっていても、公的な支援(公助)で安心、安全な生活保障をしていこうとする今、当面課題になっている二つの事業をとりまく課題について述べました。

2011年12月16日 | カテゴリー : | 投稿者 : admin